ソーシャルスキル
 
          
個別相談では、ソーシャルスキルの練習をかねて春と夏の長いお休みに少し遠出の社会見学をしています。
そして子どもの学年によって内容を考えます。
例えば・・・
小学生は現地集合、見学した後はVOCAを使って買い物か注文、おやつを食べておしまいです。行き先もこちらが提案して本人からOKをもらうことが多いです。

中学生になると行き帰りに公共交通機関やタクシーを使います。(ふだんは家族の車で移動することが多いので、こういう機会に一般の交通機関を経験させたいと考えています)行き先やどうやって行くか(自家用車かバスか汽車かなど)は、できるだけ本人が選んで決めるようにしています。
そしてVOCAを使ってコミュニケーションの練習もしますが、もうプラス1課題を増やします。

今回は春休みにTくんと阿波踊り空港へ行った時の紹介です。徳島駅から路線バスで向い、車椅子にデジカメを固定して(外付けスイッチで)本人の好きな時にシャッターをきれるようにして空港内を見学しました。


後で撮った写真をみた時、(飛行機など)上手に撮れたねというのもありました。
しかしそれより、好き勝手に撮影してもらった(でもむやみやたらとシャッターボタンを押していませんでした)ので、本人の(意識して)見ている世界を覗き込んだような感動がありました。


 
カメラ
Sさんからいただいたカメラのセットを今回使いました。
このデジカメはシャッターリモコンがついているもので、学習用リモコンを改造して外付けのスイッチがつながるようにしてくれています。
カメラのシャッタースイッチは頭で押す事にしました。プッシュ型のスイッチの裏にマジックテープをつけると、布ばりしてある車椅子のヘッドレストへ簡単に固定できます。
 
さあ!行こう、こっちだよ〜のm
車椅子はTくんママに押してもらい、先を歩くmの後ろ姿をカシャと一枚。
 
光のトンネル
展望デッキへ向かう手前にキラキラ電飾してある通路があります。そこでパチリと写してありました。
 
飛行機いるよ
年々よく見るようになってきたTくんですが、視覚に障がいもあるし距離のある飛行機をとらえられているのか!?とmは内心ハラハラしていました。
でもそんな心配をよそに、ちゃんと飛行機を写真におさめていました。しかも珍しく同じようなアングルが数枚ありました。
 
Tくんが車椅子から見つめている世界、意識しているポイントはこんな感じなんだ!って分かった事がmにとっては大きな成果でした。
mが思っている以上に他者を意識していることがわかり、空間場面の変化を写真にとらえていました。でも、確定ではなく偶然の可能性もなしではありません。援助者としては次の機会にそのあたりを注意して観たいです。
また、人や場所の説明をもっとしてみようという方向性ができました。(それで反応やモチベーションが少し違うかどうかなどを確認したいと思います)


 
お昼どうします?その1
飛行機の離陸を見学し終えて、お昼にしようという事になりました。
レストランもあるね。食べられそうな物あるかなと入り口で相談していた時、カシャ!と撮ってありました。

 
昼食どうします?その2
売店で(空弁とか)何かないかな?と入ってみることに。
人を意識していたのがこの一枚でわかります。
もう一枚撮られていたのもレジのお姉さんでした。
 
お昼どうします?その3
唯一、モノが撮られていたのがこれ!
同じアングルが3枚ありました。
よっぽど気になっていたのだと思います。

そしてお昼に食べたいものも、実はこのお菓子を選択してVOCAで自分で買いました。
このとき「え〜!お昼、お菓子でいいの?」って何回も質問したmです。後でこの3枚の写真をみて納得しました。
 
お昼にしよう
結局、Tくんはお菓子を、mとTママはうどんを食べました。
低めの仕切りがあるテーブルに向い合わせで座ったmをパチリ。
あの時、自分を意識してくれていたんだとこの写真を後でみてわかるmでした。

子どもに写真を撮ってもらう時、これまでは上手なアングルで撮影するように声かけをしていました。
でも、今回Tくんの目線に近い位置にカメラを固定して、自由に撮ってもらったことで本人を知る種になったと思いました。
きれいなアングルで撮れたわけではないので、もしかしたら「あらら〜」ってマイナスの評価をしてしまう人もいるかもしれません。
でもTくんらしい写真、これがいいんだと思います。


 
米国には、ソーシャルスキルをイラストで学習するブックやPCソフトがあります。
今回は「Community SUCCESS」というブックを紹介します。
 
Community SUCCESS
 米国らしいイラストで、家、街中、買い物、病院、美容院、交通機関、銀行、図書館、郵便局、コインランドリーなど、さまざまな場面でどのように行動すると良く、どのようなふるまいがいけないのかを表現しています。
 例えば「家」の場面では、身支度、玄関先での応対方法、出かける際にチェックすること(カギや電気を消すなど)、帰宅してやることなどの手順を見て確認したり学ぶことができるように作成されています。
以下、いくつかピックアップします。

Jo Reynolds著 Attainment社発行
 
試着
洋服を買い求める時にするのが「試着」です。
店員さんへの声のかけ方やフィッティングルームでのマナーなどをイラストで解説。

このブックを見ると、どの場面でも「なるほどなぁ」と思います。例えば「試着」では、たくさん持ち込んではいけないとか、他の人が入っている扉を開けてはいけないとか、扉をあけたまま試着をしてはいけないとか、試着した洋服を脱ぎ散らかして出てきてはいけないなど。どんな事を知っておくといいのかが分かります。・・・ということは、教える側にとっても何を教えておく必要があるのかがわかります。それって、とても大切なことですよね。
 
トイレ
手順がイラストで解説されているのは非常にわかりやすいです。自分のペースで見返すことができるのも良いと思いました。「こういうのはダメ」というのは、◎の場面と×の場面を対比させてあるので、客観的に見られます。
実際にやって見せるわけにはいかないこともありますし、
介助指導して本人がやりながら覚えるというのもイキナリすぎて大変だ!と感じていました。
 
車いす
道の歩き方やマナー注意点の項目があるのですが、そこにはきちんと車いすバージョンもあります。

日本だとどうしても「車いすの人のための〜」とか「発達障害の人のための〜」とかになりがちな予感がします。
障害別に関係なく「ソーシャルスキル」に大切なことは同じなのだと改めて実感です。(もちろん異なることもあると思います)
 
ちょっとしたことも工夫しだいでとても便利になります。
今回は2つのちょこっとアイディアを紹介します。
それから、社会で生きていくためにはコミュニケーションは必須。しかし考えてみてもモンモンするばかり・・・この子はこのままで大丈夫なんだろうか・・・なんて不安な気持ちになったりしませんか?具体的にどんなちからが必要なんだろうと考えた時のお役立ちBOOKを紹介します。
 
どれがどれだか・・・?
鍵ってたくさん増えてくると、どれがどこのだか分からなくなって、急いでる時などは玄関先で「えっ〜と」ってパニック気味になることありませんか?
そんなときには、カギのキャップを付けてみると目印になって分かりやすくなります。暗いところでも触ってコレ!だと分かるし、いいですよ。
 
メモ帳として
車のナンバーや駅の出口、人との待ち合わせ場所、知り合いのお子さんの名前など、うっかり忘れてしまいそうな事は携帯にメモして保存します。そうするといつも持ち歩いているし、サッと確認できて何かのときに便利ですよ。
 
BOOK:親子で育てる「じぶん表現力」
親子で育てる「じぶん表現力」◆JAMネットワーク著◆株式会社主婦の友社◆定価:本体1300円

お父さんやお母さんがいつものように子どもと接しながら取り入れられる遊びやちょっとした視点の変化を通じて、恐れずに言いたいことが言える力/考えをまとめる力/理解しながら聞く力/話に反応し、働きかける力/表現を豊かにする力/話し合いに必要なスキル/相手にアピールする表現力など子どもに必要な7つの力のトレーニングを提案しています。
<mの感想>コミュニケーションは相互作用です。「子どもと一緒にトレーニングしているうちに、親の力もいっしょに育っていく。」というくだりは自然に納得できました。
 
BOOK:フィンランド・メゾット入門
フィンランド・メゾット入門◆北川達夫&フィンランド・メゾット普及会著◆株式会社経済界◆定価:本体1429円
フィンランドの国語教育を、発想力/論理力/表現力/批判的思考力/コミュニケーション力の5つのメソッドで解説しています。
<mの感想>「正しい解答」という「結果」よりも、「適切な理由付け」という「プロセス」を重視する教育方法は、本書を読んでみると、シンプルだけどとても深い内容でした。ハンディキャップのある子ども達の教育や福祉の分野でも大切な視点であると感じます。支援者にはぜひ読んで欲しいおすすめの一冊です。
 
地域の中で生活すると、さまざまな人たちとかかわるチャンスがあります。多くの場合、介助者が代わりに伝えていることがほとんどです。簡単なおしゃべりができる人でも公共の場では、緊張でなかなかうまく言えなかったりします。そんな時に、言う言葉を確認できたり、かわりに伝える工夫があるといいです。
また、おしゃべりが難しくても本人が主体となってコミュニケーションを交わすには、どんな方法があるのか考えてみました。
 
ファーストフードで買い物
ボイスポッドは両面に音声を登録しておけるカードタイプのエイドです。本体に差し込むとメッセージを再生することができます(詳しくは製品紹介の「スペシャルアイテム」を参照ください)。
スリーブにセット割引券を挟んでおいて、実際に買うときには、そのスリーブを本体に差し込んで、メッセージを店員さんに伝え注文をします。メッセージは「持ち帰ります。飲み物はアイスコーヒーでお願いします」という内容です。
 
ちょっとした時に・・・
仲間と集まったとき、外出したときなどお手洗いに行ってくることを伝えておきたい場面があります。カードを誰かに見せるのでもいいし、みんな忙しくて自分に注目してくれないとき、離れた場所にいる人に声をかけなければいけないとき、音声がつかえると便利です。そんなときは「ちょっとお手洗いに行ってきます」「お手洗いに行きたいので手伝ってください」というメッセージを登録しておきます。
 
病院に行ったとき・その1
スリーブに診察券をはさんでおけば便利です。
登録しておくメッセージは「診察をおねがいします」。
 
病院に行ったとき・その2
お薬がほしい時は、例えば「アレルギーのお薬をお願いします」というメッセージ。
 
「この子達(障害のある子ども)は、学校を卒業した後、誰か介護者が必ずそばにいる生活を送ると思います。1人で何か行動をしたり活動をすることはないでしょう。だから、その子の言いたいことがわかる人がそばにいるから、誰にでもわかりやすいコミュニケーション方法を持たなくてもいいのではないでしょうか。」障害児のコミュニケーションについて検討する席で、ある人がおっしゃった言葉に???が頭の中を駆けめぐりました。みなさんは、どう思われますか?
本当にそれがベストなのか?本人もそうしたいのか?
他の生活の可能性は無いのか?もし、介護者がいなくてもデキルことがあったらどうなる?将来、どうするか(自分でデキル/介護者に頼む)を選択できる環境ができたら本人の生活はどうなるのだろう?
地域、街、コミュニティで、障害のある人が暮らしていく時、どんな力があれば、自分の力を活かしながらもっと豊かに楽しみながら過ごしていくことができるのでしょう。自分の力でできること、代替手段を活用すれば便利なこと、そのためにどんな練習をしたり経験をしたりすればよいのかを考えていきたいと思います。
 
ソーシャルスキルをコミュニケーションから見つめる
コミュニケーションとひとことで言っても、その幅と奥は深いものです。返事・要求・質問・感情の伝達・同意・意見・意思の疎通・からかい・ジョークなどなど様々な内容を絡みあわせて私達はコミュニケーションが行っています。また、言葉だけではなく、言い方、声の調子、態度、表情、しぐさ、身振り、視線、文字、手話など多様な方法で伝達したり相手のことを理解しようとしたりしています。
その中でも、「投げかけるコミュニケーション」について考えてみましょう。
 
昨日のあなたは、どうでした?
あなたにとって、自分から投げかけるコミュニケーションとは、どのような場面で、どのような内容についてですか?
うまく思い浮かばなかったら、昨日一日のあなたを思い返してみましょう。
どんな方法または言葉で投げかけている?
また、投げかけている時はどんな気持ち?
誰に投げかけてる?投げかけやすい人と難しい人は、それぞれどんな人?
どんな時、投げかけたいと思う?
子どもと大人では、投げかけるコミュニケーションに違いがあると思う?(回数とか頻度とか内容)

投げかけのコミュニケーションは、困った時、すごくおもしろいことがあってぜひ知らせたいとき、この思いを共感してほしい時、アドバスが欲しい時、疑問を感じた時、相手を笑わせたいとき、怒った時というように、情動的に大変強いものを感じたときにみられるコミュニケーションのように思われます。
あなたの場合はどうですか?あなたの身近な人はどうですか?
 
VOCAと投げかけのコミュニケーション
これまで出会ってきたVOCAユーザーのVOCAには、「人やモノの名前」、「返答の言葉」、「要求の言葉」、などのメッセージが登録されていることが多くありました。しかし、社会で生きていく上では、様々な場所や場面で、コミュニケーションを行っていきます。
そこで、要求をはじめとする「投げかけのメッセージ」のコミュニケーションチャンスを作り、コミュニケーション経験の幅を拡げてみませんか。
 
例えば、こんな場面やこんなメッセージ!
■質問や問いかけ
街角で・・・「○○に行きたいのですが、行き方を教えてください。」(道をたずねる)
お店で・・・「○○売り場は何階ですか?」「××が欲しいのですが、置いてありますか?」
自己紹介で・・・(小学生の女の子なら)「血液型と星座は、なに?」/(10代なら)「だれのCDをよく聴く?」「バイクの免許持ってる?」

■冗談やおもしろいことを言う
各人のギャグやユーモアを活かすメッセージ!

■最近の話題や近況報告
「ねぇ、バースデープレゼントのリクエストするもの決まった?」
「週末、動物園に行ってゾウと一緒に写真を撮ったよ」
「新しいベイブレードが出るんだって。知ってる?」

■お誘い
「今度の週末、河原でバーベキューするんだけど、来ない?」
「今日のお昼は、一緒に食べよう」

■好きな歌
鼻歌や好きな曲のフレーズを登録しておく

■文句を言う