遊び
 
          
「この子と何して遊ぼうかな♪」こんなことをいつも考えています。子どもができることを活かしながら、本人が能動的に楽しむチャンスを作る。難しく考えずに道具やおもちゃを工夫すると実現できることがあります。
 
一人でもサポートできる揺れ遊び
 揺れ遊びが大好きな子どもは少なくありません。そこで好きな遊びを活かして能動的に発信するチャンスを作ります。1メッセージVOCAに「ゆらゆらして〜」の要求のメッセージを登録しておきます。支援者は本人からの発信を待ち、発信があったらすぐに揺らしてあげます。この遊びの時はたっぷり揺らさずに、子どもが「もうちょっと!」と思うくらいでストップします。そして再度、発信を待ちます。
 しかし、この揺れ遊び、毛布ブランコだと人手が必要だし、ブランコなどの大型遊具がない場合、なかなかできませんね。そこで、こころ工房ではスタンド式のハンモックを利用しています。組み立て式なので、使わない時はたたんでしまっておけて便利です。しかし、ハンモックは本来揺れ遊びの遊具ではありませんので、揺らしたときの安定性はよくありません。そのあたりは十分注意しながら遊ぶ必要があります。
 
ボールを投げる
 ボール投げが得意じゃない子もこれがあると、それっ!と遊べます。スイッチを入れるとアームが動いてボンッと投げてくれるおもちゃなんです。ボールがスポンジで出来ていて(当たっても痛くありません)、色が付いている、ある程度の大きさなのがいいです。もう10年以上も前に入手したので、現在の市場には出回っていません。
 でも、このおもちゃが無くても工夫をすればボール投げはできるはずです。例えば、ブロアーなどの強風が出る風を利用してみてはどうでしょう。
 ボールを投げられると、的当てや玉入れなどの遊びにも応用できます。
 
みんなで遊ぶ
 お友達や兄弟と一緒に遊びたい時によく使っています。
この「ちょうちょがでるゾー」は、スイッチを入れると中でファンが回って風が吹き出てきます。ゾウの鼻に見立てられた長いビニールがぐ〜んと伸びて、中からチョウチョのように紙がヒラヒラ飛び出します。それをみんなで網ですくって遊ぶんです。
 このおもちゃも古くてもう市場に出回っていませんでしたが、最近、くまのプーさんバージョンで復刻品が出たようです。
「とってもチョウチョ」
http://www.toysrus.co.jp/product/product_list.aspx
 
かくれんぼ
おしゃべりが難しい子どもとかくれんぼをして遊ぶ時、よく1メッセージVOCAを使っていました。「もういいかい?」「もういいよ〜」「み〜つけた!」など必要なメッセージを登録して活用します。
でもいつもなんとなく困っていました。広い場所でやるときに「もういいかい?」「まだだよ〜」「もういいよ〜」の声が届かなくて、決めた時間で探しにいくとまだ隠れてなかったなんてことも。そこで、トランシーバー式のこのおもちゃを使ってみたところ、バッチリ解消できました。
これは、受信機にメッセージを10秒間録音しておけます。隠れる子は送信機を持って隠れ場所が決まったら、スイッチを押します。そうすると受信機を持っている人に「もういいよ〜」のメッセージが流れるのです。このおもちゃもずっと昔に知人からいただいたもの。もう市場には出回っていません。でも、おもちゃのトランシーバー+VOCAやベビーモニター+VOCAを活用すれば、きっと同じ事はできると思います。何か工夫して遊んでみてください。
 
今回は、mが”遊びの奥深さ”を知るきっかけとなったエピソードを紹介します。
 
一緒に遊ぶことでわかることがある
ハンディキャップのある子どもさんとの遊びの活動をはじめた当初は、「遊びは楽しめるように支援者がサポートするもの」と思い込んでいました。だから、無意識のうちにこちらが予想しているように楽しめるコトをゴールとして関わっていたのかもしれません。しかしmは、雷にうたれるような経験に遭遇していくことになります。そこから学んだことは、とても大きく意味深かったと思います。遊びは単純に楽しむこと。だけどそれだけでもなく、本人のこれまで見えなかった一面が知れたり、コミュニケーションにつながっていることが本人にも関わっている者にもわかったりする”場”でもあるのです。
 
楽しみ方はいろいろある
スイッチを押すと動き出すイヌのおもちゃ。Sくんが動かし机のすみへおもちゃが進んでいくと、周囲の人が方向のむきをかえて遊んでいました。しばらく時間が経ったとき机からイヌが転落、それに驚いた周囲の人間は「わぁ〜」と大きな声を上げました。Sくんを見ると、驚いたことにゲラゲラと笑っているのです。こんなに大笑いをしているSくんをはじめて見ました。イヌが机から落ちるのがおもしろい!人がビックリしている様子がおもしろい!そう、感じているようでした。しかしその後、遊びを続けるとSくんはなんだか不服そう。その様子から周囲の人たちは「きっと飽きたんだ。もう終わりにしよう」と言いました。さきほどのSくんが大笑いしている様子をほとんどの人が気にとめていませんでした。そこで、イヌを落とすという遊びを提案してみまた。「え〜、そんなのおもしろい?」と首をかしげる周囲の人たち。しかしやってみると、Sくんはイヌを落として大爆笑するのです。周囲のあわてる様子を見ても喜んでいました。大人の発想からは思いつかない楽しみ方だと、思いました。そして”正しい遊び方”に自分はとらわれているではないかと気づいたのです。同じ遊びでも遊び方に変化をつけると、おもしろい発見があると教えられたエピソードでした。 
 
おもちゃを介して人と遊ぶ
Rちゃんは、おもちゃとスイッチの因果関係が分かり始めて3ヶ月たった頃。しかし人との遊びは、受動的な楽しみ方にとどまっていました。ある日、このイヌの舌が動くおもちゃで遊んでいた時のエピソードです。このおもちゃは、スイッチを押すとクッキーに見立てたピースをまるでイヌが食べているかのように口の奥へ運びます。しばらくして、Rちゃんのお母さんが遊びに合流しました。お母さんは続いて遊ぶためピースを元に戻そうと手を伸ばしました。その瞬間です。Rちゃんのスイッチを押す手がフッと止まりました。そういうコトが何回かあって、もしかして意図的に止めているのでは?と私は思い始めました。そこで、お母さんに「もしかしたら・・・」とお話しすと「うそ〜、もしかして私にとられるって思ってるんじゃないの?」と、いたずらっぽく声をかけました。ニヤリとゆっくり微笑むRちゃん。お母さんは「よ〜し、Rのわんちゃんのお菓子とってやろう〜」とピースに手を伸ばそうとしました。すると、Rちゃんはあわててスイッチを押しはじめます。その表情は先ほどまでとは違い、お母さんとのやりとりを意識しての笑顔に変わっていました。そうなると、おもちゃを動かすことより、お母さんとのやりとり、さわらせないよ〜!(だから動かす)という楽しみ方に遊びが変わりました。やりとりを交わしながら遊ぶきっかけにもなることを教えられたエピソードでした。
 
集中して遊ぶ
Jくんは、1つの遊びに集中して遊ぶ時間がとても短いお子さんです。新しい刺激を求めて次々と別のおもちゃを手にとり、周囲から他の刺激が入ると、そちらに注意が移っていきます。他の刺激が影響しないように工夫しましたが、集中して遊ぶことはなかなか難しい状況でした。そのうち、これがJくん流の楽しみ方なんだと、認識するようになりました。そんなある日、一つのおもちゃがJくんの新たな一面を見せてくれたのです。このおもちゃは「ドミノマシーン」といってスイッチを押すと、ピースが出て並べていきます。Rくんは、ピースが並ぶ様子を食い入るように見つめ、その集中はすべてのピースが並べ終わるまで続きました。そして、またピースをセットしようと行動を始めたのです。その後、遊びは繰り返され何回も続きました。その子のニーズにあう”遊び”やおもちゃにであうと、全く違う一面を知ることができることを知ったエピソードでした。この時、おもちゃに子どもを合わせのではなく、子どもに応じたおもちゃをコーディネイトする大切さを改めて感じたのでした。
 
☆おもちゃ遊びのバリエーション☆
ハンディキャップがある子ども達が楽しめるおもちゃは、どんなおもちゃでしょう。音が出る、シンプルでわかりやすい、光る、さわってわかりやすい、操作しやすいボタンなど・・・要素はいろいろと考えられます。
おもちゃ自体にバリアがないことが望ましいけれど、あなたの手にかかれば、工夫次第で楽しさがド〜ンと5倍!10倍!になるんですよ。
おもちゃ遊びのバリエーションを紹介します。
 
基本形
これは、こころ工房秘蔵のおもちゃ「ぐるぐる」です。
もうずいぶん昔に入手したので、「ぐるぐる」自体は店頭で手に入らないと思います。ここで大切なことはおもちゃではなく、あなたの「工夫」なのです。子どもが楽しめるようにおもちゃの方が歩みよるアイディアです。
本体のレバーをスライドさせると、中心の軸が回転して、付属のパーツが歯車の原理で動き出します。パーツは自由に組み替えることができるので、子どもは好きなようにカタチを変えて楽しむことができるおもちゃです。
BDアダプター(ablenet社)を電池ボックスに接続すれば、外付けの1スイッチで楽しむことができます。
 
♪楽器になった〜♪
発案者は、Mさん。娘さんは1スイッチをつなげて使っています。そして音楽サークルに参加しているそうです。
中心の軸に支柱をつけます。支柱の上部にピアノ線でつくったアームをとりつけ、小さなマスコットをぶら下げます。
支柱の周りにメロディーベルを立てるとできあがり!スイッチをオンにすると支柱が回転して、マスコットがベルに当たり、なんとも言えない音が奏でられるのです。動きと生音が子どもには、いいようです。
ちなみにメロディーベル(河合楽器)は、最初から立てるためのゴム吸盤が付いています。
 
どれにしようかな・・・
中心に→を付ければ、選択するエイドに早変わりです。
決定するもののところで、やじるしを止めます。
実際のおやつをならべれば「今日のおやつどれにする?」!写真をならべれば「だれとする?」!というぐあいに、さまざまのコトを決めることを遊びを通して経験できます。
もし、やじるしをコントロールすることが難しいのなら、ラッチ&タイマー(ablenet社)やビックマック(ablenet社)などをつかってみましょう。「どれにしようかな♪神様の言うとおり〜」で止まったところで、OKにすれば大丈夫!
 
おもちゃのバリエーションを考えるコツありますか?
はい!あります。
それは、発想方法をモノ(おもちゃ)に子どもをあわせるのではなく、子どもの楽しみにモノをあわせる考え方に変わることです。「こんなことできると、楽しいだろうな。」とか「あんなことできると、いい経験になるのにな。」というタネを持つことからはじめましょう。
おもちゃ遊びや参加の楽しみを子どもにただ「消費」させるのではなく、なんらかの経験として「創造」することへ向かうためにはどんな工夫をしたらいいかと考えてみましょう!
 
どのような遊びにおいても楽しむことが一番です。1つのおもちゃで何回も何回も十分満足するまで遊ぶ子もいれは、次々とおもちゃや遊びを変えていく子もいます。遊び方や楽しみ方のスタイルは、その子その子で様々なのです。当たり前のことなのですが、遊びにはこうやって遊ばなくちゃいけないというルールはありません。
また、遊びの内容も多様です。水遊び・光遊び・音遊び・風遊びというような感覚刺激を楽しむ遊びから野球ゲーム・すごろく・ビンゴゲームのように人とのやりとりやゲーム性を楽しむ遊びまで。どんな遊びをするかは、発想次第です。利用するおもちゃ等を工夫して遊び方のバリエーションを拡げてみましょう。

 
風で遊ぼう [1]
道具:ドライヤー(冷風で使用)・自作の箱とふくらませるモノ・パワーリンク(電気器具コントロールユニット)ablenet社・スイッチ
 
風で遊ぼう [2]
スイッチを入れるとドライヤーから風が送られ、ビニール袋がどんどんふくらみます
 
風で遊ぼう [3]
ビックリ箱みたいに遊んでも楽しいし、最後に手を離してビニール袋を飛ばしてもおもしろいです。
 
風船で遊ぼう
風船がどんどんふくらむ様子は、なぜかわくわく、ドキドキします。ふくらました風船を飛ばして遊んだり、ボールにして遊んだり、飾り付けをしてみるのもおもしろいですよ。
道具:電動空気入れ・パワーリンク(電気器具コントロールユニット)ablenet社・スイッチ・ゴムふうせん