シンプルテクノロジーって何?
私達にとって様々な経験を得ることは、より豊かに楽しく生きていくために大変重要なことです。経験を通して「自分にも出来るという自信」と「もっとやってみたいという意欲」がこころに育まれていきます。また、実際のコミュニケーション場面の中でやりとりを楽しんだり、自己決定を行っていくことでコミュニケーション能力の基礎が形成されていきます。それは、どこで暮らしていても、子どもでも大人でも、どのような障害があっても変わるものではありません。しかし、現実には障害のためにさまざまな制約が出たり、本人に興味はあっても実際には経験不足になっていることがあると思われます。「何か工夫できないだろうか」多くの人がよく口にする言葉です。

では、どうすれば障害のある人々を支援することができるのでしょうか?そこで、考え出されたことが、多方向からのアプローチでした。何か方法を置き換えてみることで活動へ参加することができるとしたら・・。様々なことをもっともっと楽しむ機会が作れるのではないだろうか?このような発想から、一手段としてシンプルテクノロジーが活用されるようになりました。

しかし、とにかくスイッチを使ったり、電動おもちゃを使ったり、コンピュータを使ったりすれば、多くの経験を得ることができるのか?というと、そうではありません。
活動やその方法をきちんと子どものニーズにあわせ、子ども自身の実態を支援者が把握していかなければ、ただスイッチを押しているだけ、ただコンピュータの前に座って画面を見ているだけになります。本人のデキルことを活かし、気持ちを豊かにするためのシンプルテクノロジーの活用方法を共に考えてみましょう。
 
 電動おもちゃとBDアダプター、スイッチの接続方法
[つなぎ方]
つなぎ方の図 電動おもちゃを使った遊びでは、スイッチの他におもちゃとスイッチを接続するためのBDアダプター(Battery Device Adapter)が必要です。
BDアダプターは、プラスティックの円盤の両面に銅板を張り付けたもので、そこからコードが伸びています。
 
[接続方法]
接続方法の図
1) 電動おもちゃの電池ボックスを 開け、電池の+または−の接点のところへBDアダプターを挿入する。
2) おもちゃの電源がONの状態であることを確認し、BDアダプターのジャックに手持ちのスイッチをつなげる。
3) 子どもがスイッチを押すと、電流が流れおもちゃは動きだす。
 
 生活の中への拡がり
おもちゃ遊びは、遊びだけにとどまらず、子どもたちの様々な生活場面の中でも生かしていくことができます。おもちゃやVOCAを操作するスイッチを子どもたちの生活の中でも取り入れていきます。そうした場合、スイッチの他にもう一つ電気製品の操作を1スイッチで制御できる電気器具コントロールユニットやリモコンが必要です。このコントローラが電気製品を制御するため、子どもたちは遊びの時に使用しているスイッチをそのまま利用しておもちゃに代わり電気製品を操作することが出来ます。
 
 電気製品とコントロールユニット、スイッチの接続方法
 (ここでは、ablenet社のパワーリンク2の場合について紹介します)
電気製品とコントロールユニット、スイッチの接続方法の図
 
 VOCAって何?
話すことが難しくても音声でコミュニケーションをとりたい人のために、VOCA(Voice OutputCommunication Aid)と呼ばれる音声出力方式のコミュニケーションエイドが利用されています。VOCAを利用することにより、文字を獲得していない場合でも音声によってコミュニケーションをとることが可能となります。音声を媒介にしたコミュニケーションは、特別な知識を持たない相手にも分かりやすく、聴覚的なフィードバックがかかることによって、VOCAを利用する本人の理解も助けます。

多くのVOCAは、1スイッチや2スイッチ、または直接キーボードを押すことで言葉を選択したり決定して操作していきます。あらかじめ言葉をデジタル録音しておいて音声を発声させるタイプとキーボードから文字を入力して発声させるタイプ、その両方を組み合わせたタイプがあります。VOCAは、意志を伝えたり返事をしたりするためのコミュニケーションエイドとして利用されることが多いのですが、それだけにとどまらず、遊びの中でも十分利用して楽しんでいくことが可能でです。こういった遊びの中で、子どもたちは音声を使う楽しさを学んでいきます。
 
つなぎ方の図